高円寺駅から徒歩七分のシェア型書店。  1列単位の棚主がつくる新しい書店。

九月社

九月社が生まれたのは、2021年10月、宮城は石巻の一箱古本市への出店の折でした。自分の読んだ古本を売る一箱古本市への出店自体が初めてだったのに、遠い石巻で実行しちゃうのは我ながらぶっ飛んでいたかも。
なんで石巻かというと、石ノ森章太郎が好きだからです。石巻には、石ノ森館があるのです。酒と魚の旨い石巻も好きになりました。石ノ森の『サイボーグ009』は、中学以来、僕のバイブルです(なおバリバリのゆとり世代)。手塚治虫もそうですが、石ノ森作品においても「反戦」は重要なテーマの一つ。反戦、反差別、正義……そうした信念はこんこんと自分にも受け継がれている気がします。結局、『サイボーグ009』に登場するキャラクターのバックグラウンドから歴史に興味を持つようになり、僕は大学では歴史学を専攻し、ドイツ近現代史で修論を書きました。研究の関心は、戦争がどのように記憶されるか。そして「記憶」というのは今も僕にとって大切なテーマです。みなさんにとって本屋とはどのような存在でしょうか。僕にとっては、どこの本屋で買ったか、といった出会いの記憶として本とともに思い出されるものでもあります。
こうして、歴史学やその周辺分野での学びは、僕という一人の人間を涵養しました。歴史教育研究者のサム・ワインバーグは、歴史学は奇妙な思考法であると論じました(『歴史的思考――その不自然な行為』春風社、2017年)。長期的な視点でものごとを見ることができると、あらゆる社会規範から、法律や国家体制さえも絶対的なものではないということがわかるし、さまざまな出来事の可変性=ものごとを変えられた(る)可能性に思い至ります。
「本」という知的インフラは、あらゆる暴力に抗う知恵や力の源泉だと思っています。知らなければ暴力や差別だと気づかないこともあります。だから九月社では、歴史学を中心に、人文系の本をメインに取り揃えていきます。
もう一つ、暴力に対抗するためとかそういう目的なんか関係なしに、純粋に学問や文芸の面白さはかけがえのないものだと思っています。しかし、それらを楽しめるとしたら、それは「平和」だからにほかなりません。すべてのこと、安全に本が読めるということさえも、政治的なことです。

九月社のロゴに描いたこぐまは、すなわち子どもたちの象徴です。誰もが心安らかに本を読める世界をみなさんと共につくっていきたいと願っています。フリーパレスタイン。

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